人間の肌に良いことが知られているシルクを、惜しみなく配合したスキンケアブランドが、“OKAYA繭つむぎ”シリーズ。
諏訪湖のほとりの、養蚕に使われていた築100年の歴史を持つ小屋から生まれました。自然の力を最大限に活かしたエシカルで無添加の化粧品は、ひとりの女性の、シルクとホームタウンへの思いから作られています。
肌が弱くて困っている人たちから熱い支持を受けている、シルクを配合した“OKAYA繭つむぎ”の化粧品。
元々は看護師だった伊藤 眞由美さんが、たったひとりで作り始めたこの化粧品には、どんな思いが込められているのか、お話を伺いました。
―化粧品を作っていらっしゃる以外にも、アロマトリートメントの施術や手作り石鹸の教室なども開いていらっしゃいますね。どういった経緯で化粧品を作ることになったのでしょうか?
伊藤さん:一番初めは、アロマトリートメントのサロンからスタートしたんです。というのが、私は子供の頃からアトピー性皮膚炎を患っていまして、しかも割と重度に出ていることも多く、ずっとステロイド剤を塗って生活していたんです。改善策を探す過程でアロマトリートメントに出会い、香りの力を実感しまして。
―なるほど、それはお辛いですよね。よくわかります。
伊藤さん:はい。しかも一時期、アトピーがなんだかとてもひどくなってしまった時期がありまして……。何を使ってもかゆくなってしまい、このままではダメだと思って、自分でコールドプロセス製法という作り方を勉強して、石鹸を作り始めたんです。それを使い始めたらとても良くて、少しずつ肌も改善し始めて、皮膚科に行く頻度が減ってきたんですね。
―初めからシルクの成分を配合した石鹸だったんですか?
伊藤さん:いえ、初めは育てているラベンダーやローズなど、アロマトリートメントにも使っていた植物のエキスを入れていました。また、地域のもので作りたいなという思いもあって、地元、長野県岡谷市の日本酒や酒かす、米ぬかなども使っていました。
―なぜシルクを配合することになったのでしょう。
伊藤さん:きっかけは、地元の岡谷市の“地域起こし協力隊”の方から、「シルクで石鹸を作ってみたらどう?」と提案されたことです。というのも実は私の夫の先祖が、昭和の初期頃まで製糸会社をやっていたんです。岡谷市では一時期製糸が一大産業だったんですよね。
―旦那さんのご実家が。確かに製糸は、一時期日本の代表的な産業でしたね。
伊藤さん:はい。昔は岡谷市に製糸工場や会社がたくさんあったそうですが、現在は1軒しか稼働していません。そこで今もお蚕様を育てて糸を取っているんです。ですがその過程で、どうしても製品の基準に満たない繭が出たり、最後にビス糸(生糸を引いた後に残る最後の内側の部分)というものが残ってしまうそうで、それらは大量に廃棄されていると。その廃棄してしまう分を使って石鹸を作れませんか、と言われて、試しに作ってみたんです。
―今も蚕を育てて糸を取っていらっしゃるなんて、なんだか感動します。
伊藤さん:そうしたら、すごくいい石鹸ができたんです。乾燥しないし、どうしてこんなに肌になじむんだろう、と思いシルクについて色々と勉強してみたら、シルクは18種類のアミノ酸が結合したたんぱく質で、人間の肌や髪の毛と同じ成分で、肌にも体にも良いことがたくさんあるということがわかりまして、製品化をしようということになりました。
―伊藤さんご自身の肌も改善されましたか?
伊藤さん:はい、季節やストレスなどによって時々調子が落ちることもありますが、アトピーが一番ひどかった時期に比べると、とてもよい状態が続いています。薬に頼る頻度も減ったことが本当に嬉しいんです。
―そこで、築100年の小屋で石鹸や他の化粧品を作り始められたんですね。この小屋とは?
伊藤さん:はい。この小屋も夫の実家のもので、製糸会社をやっていた時に使っていた蔵と小屋がすべて手つかずで残っていたんです。製糸会社の資料や貴重な写真なども、ぜんぶ残っていたんです、誰も片付けていなくて(笑)。市内でお蚕様を飼っている有志の方たちに手伝ってもらい、大掃除をし、リフォームもしました。出てきた写真などの貴重な資料は、地元の岡谷蚕糸博物館に寄贈しました。
―伊藤さんのおかげで貴重な資料が消えずにすんだんですね(笑)
伊藤さん:そうですね、たまたま夫の実家が製糸会社だったということは、コレはシルクでつながったご縁だな、と思いまして、その場所を使って手作り石けん教室を開いているんです。地元のこととはいえ、岡谷市でそこまで養蚕や製糸工業が盛んだった、ということは私もあまり知らなかったですし、シルクを通して、何かご先祖様とつながった感じがして。これは私の使命なのかな、という風にも感じていまして。
―シルクの成分を配合するために大変なことなどはありますか?
伊藤さん:元々廃棄される繭なので、最初の状態は脱皮した殻がついたままだったりします。まずそれを手作業ですべて取るので、そこは少し大変ですね。でもキレイにして、真っ白い石鹸を作りたいので、苦労とは感じていません。
―廃棄されるはずだったものを上手く利用することは、大事なことですね。
伊藤さん:はい。昔の人は、カイコを「お蚕様」と呼んで、虫だけれども本当に尊敬して、大事に大事に育てて、糸を取るだけでなくさなぎも食べて、本当に無駄なく使ってきたという歴史があることがわかったので、私も本当に無駄にしないように、と思うんです。
―ただ、基本的におひとりですべてを行っていらっしゃるというのが、大変では?とも思いますが。
伊藤さん:まだ規模も小さいので、今のところはなんとかひとりで切り盛りできています(笑)。ただ、私の息子が先天性の障害がありまして、障害者施設で働いているんですけど、なかなかしっかりした収入に結びつかない、という現実がありまして。なので私のこの仕事をもう少し広げていき、そういう障害を抱える方たちと一緒にやっていけたら。岡谷市の障害のある方たちと作っていけたら、という夢があります。
―それはステキな夢ですね。地元への愛が詰まっていますね。
伊藤さん:いえいえ、そこまで地元愛が強いタイプだとも思っていなかったんですけど(笑)。でも地元によいものがたくさんあるなということは以前から感じていて、昔岡谷で盛んだったシルクという、こんなにいいものがある。でも捨てられてしまう分が大量にある。コレを使って製品ができて、それでお肌にトラブルがあって困っている人が少しでも救われるなら、こんなにいいことはない、と思ったんです。
―結果的に環境にもとても優しい化粧品になったんですね。
伊藤さん:はい。この石鹸は、水に溶けて流れても24時間で水と炭酸ガスに分解されるので、環境に負荷をかけません。またこの石鹸ひとつで髪の毛も含めて全身洗えるので、ゴミもかなり減らせます。
―なるほど、ゴミ問題にもつながるんですね。
伊藤さん:やっぱり長野県でも、冬が寒くない、雪が減ったなど、地球温暖化の影響をひしひしと感じているので、今のお子さんたちが健康に生きていける環境を少しでも守るためにも、地球に優しい生活をするべきだろうなと思っているんです。この石鹸がそのために役立つひとつになれればいいなと思っています。
今回取材・執筆をしたのはこの方!
斎藤 真知子
美容、健康、エンタメネタ中心のライター&編集者。編集プロダクションと美容雑誌編集部を経てフリーランスに。かれこれウン10年美容業界の片隅でお仕事中。肌データは、アトピー持ちの(でも現在はほぼ出ない)基本乾燥肌。……なのに寄る年波で部分的な毛穴の開きやテカリ、たるみも気になる。スペインとお肉とオヤジ俳優好き。